、某省《ぼうせう》の属官《ぞくくわん》が二人《ふたり》、大阪《おほさか》と横浜《よこはま》とで銀行員《ぎんかういん》が二人《ふたり》、三州《さんしう》の在《ざい》に隠《かく》れて樹《き》を種《う》ゑて居《ゐ》るのが一人《ひとり》、石炭《せきたん》の売込屋《うりこみや》が一人《ひとり》、未《ま》だ/\有るが些《ちよつ》と胸に浮《うか》ばない、先《ま》づ這麼《こんな》風《ふう》に業躰《げふてい》が違つて居《ゐ》るのです、而《さう》して、後※[#二の字点、1−2−22]《のち/\》硯友社員《けんいうしやいん》として文壇《ぶんだん》に立つた川上眉山《かはかみびさん》、巌谷小波《いはやせうは》、江見水蔭《えみすゐいん》、中村花痩《なかむらくわさう》、広津柳浪《ひろつりうらう》、渡部乙羽《わたなべおとは》、などゝ云《い》ふ面々《めん/\》は、此《こ》の創立《さうりつ》の際《さい》には尽《こと/″\》く未見《みけん》の人であつたのも亦《また》一奇《いつき》と謂《い》ふべきであります、
因《そこ》で其《そ》[#ルビの「そ」は底本では「その」]の雑誌と云《い》ふのは、半紙《はんし》両截《ふたつぎり》を廿枚《にぢうまい》か卅枚《さんぢうまい》綴合《とぢあは》せて、之《これ》を我楽多文庫《がらくたぶんこ》と名《なづ》け、右の社員中から和歌《わか》、狂歌《きやうか》、発句《ほつく》、端唄《はうた》、漢詩《かんし》、狂詩《きやうし》、漢文《かんぶん》、国文《こくぶん》、俳文《はいぶん》、戯文《げぶん》、新躰詩《しんたいし》、謎《なぞ》も有れば画探《ゑさが》しも有る、首《はじめ》の方《はう》には小説を掲《かゝ》げて、口画《くちゑ》も挿画《さしゑ》も有る、是《これ》が総《すべ》て社員の手から成《な》るので、其《そ》の筆耕《ひつこう》は山田《やまだ》と私《わたし》とで分担《ぶんたん》したのです、山田《やまだ》は細字《さいじ》を上手《じやうづ》に書きました、私《わたし》のは甚《はなは》だ醜《きたな》い、で、小説の類《るい》は余《あま》り寄稿者《きかうしや》が無かつたので、主《おも》に山田《やまだ》と石橋《いしばし》と私《わたし》とのを載《の》せたのです、此《こ》の三人《さんにん》以外《いぐわい》に丸岡九華《まるおかきうくわ》と云《い》ふ人がありました、此《この》人は小説も書けば新躰詩《しんたいし》も
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