ら込入《こみい》つたお話は承《うけたま》はらんでも宜《よろし》い、但何故《ただなにゆゑ》に貴下方は活《い》きてをられんですか、それだけお聞せ下さい」
「…………」
「お二人が添ふに添れん、と云ふやうな事なのですか」
男は甚《はなは》だ微《かすか》に頷《うなづ》きつ。
「さやうですか。さうしてその添れんと云ふのは、何故《なにゆゑ》に添れんのです」
彼は又黙せり。
「その次第を伺つて、私《わたくし》の力で及ぶ事でありましたら、随分御相談|合手《あひて》にも成らうかと、実は考へるので。然し、お話の上で到底私如きの力には及ばず、成程活きてをられんのは御尤《ごもつとも》だ、他人の私《わたし》でさへ外に道は無い、と考へられるやうなそれが事情でありましたら、私は決してお止《とど》め申さん。ここに居て、立派に死なれるのを拝見もすれば、介錯《かいしやく》もして上げます。
私《わたくし》もこの間に入つた以上は、空《むなし》く手を退《ひ》く訳には行かんのです。貴下方を拯《すく》ふ事が出来るか、出来んか、那一箇《どつちか》です。幸《さいはひ》に拯《すく》ふ事が出来たら、私は命の親。又出来なかつたら、貴下方はこの世に亡《な》い人。この世に亡い人なら、如何《いか》なる秘密をここで打明けたところが、一向|差支無《さしつかへな》からうと私は思ふ。若《も》し命の親とすればです、猶更《なおさら》その者に裹《つつ》み隠す事は無いぢやありませんか。私は何も洒落《しやれ》に貴下方のお話を聴かうと云ふのぢやありません、可うございますか、顕然《ちやん》と聴くだけの覚悟を持つて聴くのです。さあ、お話し下さい!」
第 五 章
貫一は気を厳粛《おごそか》にして逼《せま》れるなり。さては男も是非無げに声|出《いだ》すべき力も有らぬ口を開きて、
「はい御深切に……難有《ありがた》う存じます……」
「さあ、お話し下さい」
「はい」
「今更お裹《つつ》みなさる必要は無からう、と私は思ふ。いや、つい私は申上げんでをつたが、東京の麹町《こうじまち》の者で、間《はざま》貫一と申して、弁護士です。かう云ふ場合にお目に掛るのは、好々《よくよく》これは深い御縁なのであらうと考へるのですから、決して貴下方の不為《ふため》に成るやうには取計ひません。私も出来る事なら、人間|両個《ふたり》の命を拯《すく》ふのですから、ど
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