うにでもお助け申して、一生の手柄に為て見たい。私はこれ程までに申すのです」
「はい、段々御深切に、難有う存じます」
「それぢや、お話し下さるか」
「はい、お聴に入れますで御座います」
「それは忝《かたじけ》ない」
彼は始めて心安う座を取れば、恐る惶《おそ》る狭山は先《ま》づその姿を偸見《ぬすみみ》て、
「何からお話し申して宜《よろし》いやら……」
「いや、その、何ですな、貴下方は添ふに添れんから死ぬと有仰《おつしや》る――! 何為《なぜ》添れんのですか」
「はい、実は私は、恥を申しませんければ解りませんが、主人の金を大分|遣《つか》ひ込みましたので御座います」
「はあ、御主人|持《もち》ですか」
「さやうで御座います。私は南伝馬町《みなみてんまちよう》の幸菱《こうびし》と申します紙問屋の支配人を致してをりまして、狭山元輔《さやまもとすけ》と申しまする。又これは新橋に勤を致してをります者で、柏屋《かしわや》の愛子と申しまする」
名宣《なの》られし女は、消えも遣《や》らでゐたりし人陰の闇《くら》きより僅《わづか》に躙《にじ》り出でて、面伏《おもぶせ》にも貫一が前に会釈しつ。
「はあ、成程」
「然るところ、昨今これに身請《みうけ》の客が附きまして」
「ああ、身請の? 成程」
「否でもその方へ参らんければ成りませんやうな次第。又私はその引負《ひきおひ》の為に、主人から告訴致されまして、活《い》きてをりますれば、その筋の手に掛りますので、如何《いか》にとも致方《いたしかた》が御座いませんゆゑ、無分別《むふんべつ》とは知りつつも、つい突迫《つきつ》めまして、面目次第も御座いません」
彼等はその無分別を慙《は》ぢたりとよりは、この死失《しにぞこな》ひし見苦しさを、天にも地にも曝《さら》しかねて、俯《ふ》しも仰ぎも得ざる項《うなじ》を竦《すく》め、尚《なほ》も為ん方無さの目を閉ぢたり。
「ははあ。さうするとここに金さへ有れば、どうにか成るのでせう! 貴方の費消《つかひこみ》だつて、その金額を弁償して、宜《よろし》く御主人に詑《わ》びたら、無論内済に成る事です。婦人の方は、先方で請出すと云ふのなら、此方《こつち》でも請出すまでの事。さうして、貴方の引負《ひきおひ》は若干《いくら》ばかりの額《たか》に成るのですか」
「三千円ほど」
「三千円。それから身請の金は?」
狭山は女を顧
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