占《うらな》はんと試《こころむ》るまでに、いと善く見極《みきは》めたり。されども、いかにせん、彼の相するところは始に疑ひしところと頗《すこぶ》る一致せざる者有り。彼|若《も》し実《まこと》に人を懼るると為《せ》ば、彼の人を懼るる所以《ゆゑん》と、我より彼の人を懼るる所以と為《な》す者とは、或《あるひ》は稍《やや》趣《おもむき》を異《こと》にせざらんや。又想ふに、彼は決して自ら尤《とがむ》るところなど有るに非ずして、止《た》だその性《せい》の多羞《シャイ》なるが故のみか、未だ知るべからず。この二者《ふたつ》の前《さき》のをも取り難く、さすがに後のにも頷《うなづ》きかねて、彼は又|新《あらた》に打惑《うちまど》へり。
午飯《ひるめし》の給仕には年嵩《としかさ》の婢《をんな》出でたれば、余所《よそ》ながらかの客の事を問ひけるに、箸《はし》をも取らで今外に出で行きしと云ふ。
「はあ、飯《めし》も食はんで? 何処《どこ》へ行つたのかね」
「何でも昨日《きのふ》あたりお連様《つれさま》がお出《いで》の筈《はず》になつてをりましたので御座いませう。それを大相お待ちなすつてゐらつしやいましたところが、到頭お着が無いもんで御座いますから、今朝《けさ》から御心配|遊《あそば》して、停車場《ステエション》まで様子を見がてら電報を掛けに行くと有仰《おつしや》いまして、それでお出ましに成つたので御座います」
「うむ、それは心配だらう。能く有る事だ。然し、飯も食はずに気を揉《も》んでゐるとは、どう云ふ伴《つれ》なのかな。――年寄《としより》か、婦《をんな》ででもあるか」
「如何《いかが》で御座いますか」
「お前知らんのか」
「私《わたくし》存じません」
彼は覚えず小首を傾《かたむ》くれば、
「旦那《だんな》も大相御心配ぢや御座いませんか」
「さう云ふ事を聞くと、俺《おれ》も気になるのだ」
「ぢや旦那も余程《よつぽど》苦労性の方ですね」
「大きにさうだ」
「それぢやお連様がいらしつて見て、お年寄か、お友達なら宜《よろし》う御座いますけれど、もしも、ねえ、貴方《あなた》、お美《うつくし》い方か何かだつた日には、それこそ旦那は大変で御座いますね」
「どう大変なのか」
「又御心配ぢや御座いませんか」
「うむ、大きにこれはさうだ」
風恬《かぜしづか》に草|香《かを》りて、唯居るは惜き日和《ひより》
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