として生涯の友にせうと思うた人は、後にも先にも貴方ばかりじや。いや、それは段々お世話にもなつた、忝《かたじけな》いと思うた事も幾度《いくたび》か知れん、その媛友《レディフレンド》に何年ぶりかで逢うたのぢやから、僕も実に可懐《なつかし》う思ひました」
宮は泣音《なくね》の迸《ほとばし》らんとするを咬緊《くひし》めて、濡浸《ぬれひた》れる袖《そで》に犇々《ひしひし》と面《おもて》を擦付《すりつ》けたり。
「けれど又、円髷《まるわげ》に結うて、立派にしてゐらるるのを見りや、決《け》して可愛《かはゆ》うはなかつた。幸ひ貴方が話したい事が有ると言《いは》るる、善し、あの様に間を詐《いつは》つた貴方じや、又僕を幾何《どれ》ほど詐ることぢやらう、それを聞いた上で、今日こそは打※[#「※」は「足+(殕−歹)」、297−11]《うちのめ》してくれやうと待つてをつた。然るに、貴方の悔悟、僕は陰《ひそか》に喜んで聴いたのです。今日《こんにち》の貴方はやはり僕の友《フレンド》の宮さんぢやつた。好う貴方悔悟なすつた! さも無かつたら、貴方の顔にこの十倍の疵《きず》を附けにや還《かへ》さんぢやつたのです。なあ、自ら容されたのは人に赦さるる始――解りましたか。
で、間に取成してくれい、詑《わび》を言うてくれい、とのお嘱《たのみ》ぢやけれど、それは僕は為《せ》ん。為んのは、間に対してどうも出来んのぢやから。又貴方に罪有りと知つてをりながらその人から頼まるる僕でない。又僕が間であつたらば、断じて貴方の罪は容さんのぢやから。
かうして親友の敵《かたき》に逢うてからに、指も差さずに別るる、これが荒尾の貴方に対する寸志と思うて下さい。いや、久しぶりで折角お目に掛りながら、可厭《いや》な言《こと》ばかり聞せました。それぢや、まあ、御機嫌好《ごきげんよ》う、これでお暇《いとま》します」
会釈して荒尾の身を起さんとする時、
「暫《しばら》く、どうぞ」宮は取乱したる泣顔を振挙《ふりあ》げて、重き瞼《まぶた》の露を払へり。
「それではこの上どんなにお願ひ申しましても、貴方はお詑を為《なす》つては下さらないので御座いますか。さうして貴方もやはり私《わたくし》を容《ゆる》さんと有仰《おつしや》るので御座いますか」
「さうです」
忙《せは》しげに荒尾は片膝《かたひざ》立ててゐたり。
「どうぞもう暫くゐらしつて下
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