ういたしたら宜《よろし》いのでございませう……間さん、かうなのでございますよ」
「いや、その事なら伺ふ必要は無いのです」
「あら、そんなことを有仰《おつしや》らずに……」
「失礼します。今日《こんにち》は腰の傷部《きず》が又痛みますので」
「おや、それは、お劇《きつ》いことはお在《あん》なさらないのでございますか」
「いえ、なに」
「どうぞお楽に在《ゐら》しつて」
貫一は無雑作に郡内縞《ぐんないじま》の掻巻《かいまき》引被《ひきか》けて臥《ふ》しけるを、疎略あらせじと満枝は勤篤《まめやか》に冊《かしづ》きて、やがて己《おのれ》も始めて椅子に倚《よ》れり。
「貴方《あなた》の前でこんな事は私申上げ難《にく》いのでございますけれど、実は、あの一昨々日でございますね、ああ云ふ訳で鰐淵さんと御一処に参りましたところが、御飯を食べるから何でも附合へと有仰《おつしや》るので、湯島《ゆしま》の天神の茶屋へ寄りましたのでございます。さう致すと、案の定|可厭《いやらし》い事をもうもう執濃《しつこ》く有仰るのでございます。さうして飽くまで貴方の事を疑《うたぐ》つて、始終それを有仰るので、私一番それには困りました。あの方もお年効《としがひ》の無い、物の道理がお解りにならないにも程の有つたもので、一体私を何と思召《おぼしめ》してゐらつしやるのか存じませんが、客商売でもしてをる者に戯《たはむ》れるやうな事を、それも一度や二度ではないのでございますから、私残念で、一昨々日なども泣いたのでございます。で、この後二度とそんな事の有仰れないやうに、私その場で十分に申したことは申しましたけれど、変に気を廻してゐらつしやる方の事でございますから、取《と》んだ八当《やつあたり》で貴方へ御迷惑が懸りますやうでは、何とも私申訳がございませんから、どうぞそれだけお含み置き下さいまして、悪《あし》からず……。
今度お会ひあそばしたら、鰐淵さんが何とか有仰るかも知れません。さぞ御迷惑でゐらつしやいませうけれど、そこは宜《よろし》いやうに有仰つて置いて下さいまし。それも貴方が何とか些《ちよつと》でも思召してゐらつしやる方とならば、そんな事を有仰られるのもまた何でございませうけれど、嫌抜《きらひぬ》いてお在《いで》あそばす私《わたくし》のやうな者と訳でもあるやうに有仰《おつしや》られるのは、さぞお辛くてゐらつしやい
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