微笑まで浮べた。
「ああその子ですか、私の家へ遊びに来たんです。眼のまんまるいくるりとした、五つか六つの女の子です。夕方でしたが、私が家に帰りかけると、後からおとなしくついて来るものですから、私はもうすっかり嬉しくなって、家の中へ引入れました。子供は嬉しそうでしたよ。きょろきょろ室の中を見廻していましたが、やがて馴れてくると、机の抽斗《ひきだし》の中をかき廻したり、茶箪笥の中の物を持出したりして、おとなしく遊びました。ただ困ったのは、食事のことです。その頃私の家には女中がいなくなって、私一人きりだったものですから、昼間会社へ出かける時には、家を閉めてゆくことにしていました。そんなわけですから、晩飯の仕度は自分でしなければならなかったのです。所が子供を一人留守さして物を買いに出かけるのも、何だか物騒だという気がしまして、仕方なしに有り合せの物で間に合せることにしました。丁度海苔と沢庵とが残っていましたから、それを子供と二人で食べました。贅沢な子供で、お肴がほしいとか鶏卵《たまご》がほしいとか云うので、それをあやすのに弱りました。がまあ兎も角も食事を済まして、それから面白い話なんかしてやっ
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