池の清い水を飲み、それから日の光にあたって、あたりの景色を眺めましたが、そのままいい心持ちになって、うつらうつらと眠ってしまいました。


     二

 彼が眼をさました時は、もう夜になっていました。月の光がさしていて、池の面《おもて》が水銀のように輝き、白い花が気味悪いほど真っ白に浮き出して見えます。彼は木影《こかげ》に坐ったまま、夢心地でぼんやりしていました。
 すると、方々から綺麗な女達が出て来ました。みんな腰から上は真裸《まっぱだか》で、腰にいろんな色の薄絹《うすぎぬ》をつけてるのです。森の中から出て来たのは緑色の絹をまとい、水の中から出て来たのは水色の絹をまとい、白い花の咲いてる叢《くさむら》から出て来たのは白い絹をまとい、そしてその女達が池の緑の青草の上に集まって、歌ったり、踊ったりし始めました。彼はびっくりして息をこらして眺めていましたが、やがて、それは書物にあった森の精や水の精や花の精達だと覚《さと》って、なおよく見るために、木影から少し進み出て行きました。とたんに、精女達の一人が彼の姿を見つけて、何か合図をしたかと思うと、皆の姿は煙のようにどこかへ消え失せてしまい
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