魔法探し
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)濠《ほり》の中に
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一
むかし、ペルシャに大変えらい学者がいました。天地の間に何一つ知らないことはないというほど、あらゆる学問をきわめつくした人で、国王や人民達から非常に尊敬されていました。
ところがある日、高い塔の上から濠《ほり》の中に落ちて死んだ人を見て、彼はこう考えました。
「鳥は空を飛ぶことができるし、魚《うお》は水の中を泳ぎ廻《まわ》ることができる。それなのに人間だけは、空を飛ぶこともできず水にもぐることもできない。なぜだろう。もしそういうことができたなら、人間は塔から落ちても死なないですむし、水の中に落ちても溺れずにすむのだが……」
そしていろいろ考えたすえ、彼はふと魔法使いの話を思い出しました。子供の時お祖母様《ばあさま》から聞いた話で、自由自在に空を飛んだり水にもぐったりするというのです。けれどもそれはただ話に聞いただけで、いくら彼が学者でも、まだ魔法だけは知らないのでした。
「話にある以上は、実際にあることかもしれない。私はもう世の中のあらゆる学問をしつくした
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