光も見えず、夜は月の光もささず、地面には落葉が堆《うずたか》く積もって、気味の悪い苔《こけ》などが生えています。彼は落ちてる木の実や苔の間の茸《きのこ》などを食べ、ところどころに湧き出てる泉の水を飲み、疲れると一枚の毛布にくるまって落葉の上に眠り、そしてただ真っ直ぐに歩いて行きました。けれどやはり、どこまで行っても森ばかりです。
 そうして幾日か経った後、彼は木の実をかじりながら歩いていますと、ふと向こうに、晴れやかな日の光を見いだして、小踊りせんばかりに喜びました。長い間の疲れも忘れはてて、急いでやって行きますと、まあどうでしょう、森の中に大きな池がありまして、澄みきった綺麗《きれい》な水がいっぱいたたえていまして、池の縁《ふち》やまわりには、真っ白な花が一面に咲き乱れていて、その上に晴々《はればれ》とした日の光がさしているのです。彼は久し振りに日の光を見て、しばらくはぼんやりつっ立っていましたが、やがて気がついてみると、池のまわりの木には小鳥が鳴いているし、花のまわりには蝶や蜂などが飛び廻っています。深い森の中にそんな天国のような場所があろうとは、夢にも思わなかったのです。彼はまず
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