崎がどうしたことか、毎晩やって来ては酔っ払って仕様がない。一寸立寄って、また夜遅くやって来ることもある。無理に帰そうとすると、乱暴もしかねない剣幕だった。それをまた、清子がいい飲み相手にして、手がつけられない。おけいが外に泊る時には、どこでどう打合せるものか、宮崎を引入れて遅くまで飲み明す。それが毎度のことだ……、私は彼女を眺めた。毎度といっても、それから十日とたってはいなかったのだ。……いいえ、そうじゃないんですよ、と彼女は餉台の上を平手でとんと叩いた。あの時と、それからも一度……それくらい、あたしだって外にいろいろ用があるんじゃありませんか。でも、二度あれば、それでもう沢山。毎度といってもいいでしょう。そりゃあ、変なことはないにしても、困るじゃありませんか。何とか、意見をしてやって下さいません。清子の方はだめ、とてもあたしの云うことなんか聞くものですか。ほんとに困ってるんですよ。何もかも調子が狂ってしまったようで、あたし、くさくさして……。彼女は眉間に深い皺を寄せた。だが、彼女が清子に意見したというのも怪しいものだった。それはとにかく、頼まれた以上、宮崎に何とか注意してやりたかった
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