てるつもりですが、やがて、右か左かに少しずつまがっていきます。それを見ると、みんなはわっとはやしたてました。けれど、笑《わら》った者もみな、自分の番になると、やはりまっすぐには歩けませんでした。
「こんどは僕《ぼく》だ、見ておれよ」
元気よくそういって、マサちゃんという子供が、目かくしをして、歩きだしました。
広い野原の中です。オイチニ、オイチニ……と調子《ちょうし》をとってまっすぐに歩いていきます。
遠《とお》くなるにつれてだんだん小さく、帽子《ぼうし》の下に白いハンケチの目かくしをしたその後姿《うしろすがた》が、まるで人形のようで……そしてふしぎにも、まっすぐに歩いていきます。
だいぶ行ってから、くるりと向《む》きなおって、目かくしを取って、
「どうだい」
見ていた子供たちは、はじめびっくりして、ぼんやりして、それから急《きゅう》に手をたたいてほめました。
マサちゃんはもどってきました。
「君《きみ》たちは、ただまっすぐに歩こうとばかりしてるからだめだ。自分のくせを知って、練習《れんしゅう》しなくちゃいけないよ」
そこでみんなは、マサちゃんに教《おそ》わって、まっすぐ
前へ
次へ
全8ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング