風ばか
豊島与志雄
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)皆《みな》さん
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一番|先《さき》に、
−−
一
――皆《みな》さんは、人間の身体《からだ》は右と左とまったく同じだと、思っていますでしょう。右と左とにそれぞれ、眼《め》が一つ、耳が一つ、鼻《はな》が半分、口が半分、手が一つ、足が一つ……。まんなかから切ってみると、右と左とは、まったく同じように見えます。ところが、よくしらべてみると、ずいぶんちがっています。いくら神様《かみさま》でも、生きた人間の身体《からだ》を、右と左とまったく同じにこさえることは、おできにならなかったのでしょう。自分の顔《かお》やひとの顔《かお》を、よく見てごらんなさい。眼《め》でも耳でも、右と左では、その大きさや形がみなちがっています。右と左と同じなものは、けっしてありません。手なんか、大きさも長さもちがうし、力もちがいます。ことに、胸《むね》の中や腹《はら》の中になると、右と左とはひどくちがってるものです。それですから、たとえば、目かくしをして、広いところを、歩い
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