てみてごらんなさい。けっしてまっすぐに歩けるものではありません。自然《しぜん》に、右か左かにまがってしまいます。人間は、どんなりっぱな身体《からだ》のひとでも、右と左とはかたわです……。
 そういう話を、先生がなさいました。
 なるほど、よく見ると、眼《め》でも耳でも、右と左とは同じ形ではありません。
 おかしいな、と子供たちは思いました。
 が、なおおかしいのは、目かくしをしてまっすぐに歩けないことでした。自分ではまっすぐに歩いてるつもりでも、いつのまにか少しずつ、右か左かへまがってしまいます。
「みんなかたわだ」
「なに、かたわなもんか」
「じゃあ、野原にいってやってみよう」
「ようし。みんなこいよ」

     二

 広いたいらな野原でした。春さきのことで、日がうららかにてっています。芝草《しばくさ》が青々とのびだしています。蝶《ちょう》がとんでいます。空には高く、雲雀《ひばり》がないています。
 みんなでじゃんけんをして、勝《か》ったものが一番|先《さき》に、ハンケチで目かくしをして、まっすぐに歩きだしました。ほかの者は立って見ています。
 目かくしをした者は、まっすぐに歩い
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