が次第に昂じてきて、この頃ではもう、何に不満であるか何の慾望に駆られているのか、それが分らなくなってしまっている。そして彼等にはただ、くいしばった歯と齷齪した生活と疲れながら陰欝に光ってきた眼だけが残っている。中心が盲目で外部が猛獣なのだ。このままで進んでいったらどうなるだろう。これでいいものだろうか。
 右の外観上相矛盾するようで実は同じ基調の上に立つ二つの考えが、永い前から私の心の中に在った。然しそれをどうしようという気は私には無かった。私は自分が余りに怠惰で無力であると思っていた。そして絶えず奇蹟を待つような気で何かを待っていた。けれどそれも遂に徒らな空望であることを感じて私は益々倦怠と憂欝とに囚えられてしまった。
 室の中にぼんやり寝転んでいると、窓の硝子越しに十一月の晴れた空が見られた。空は徒らに高く澄み返って、一片の雲も一羽の鳥の姿さえも見えなかった。顧みると、縁側の障子には暖かそうな日の光りが一杯当っていた。それを見ると、ふと外に飛び出したくもなったが、霜枯れの葉が震えてる木の梢や、じめじめした冷い地面や、物佗びしい寒い空気や、妙に澄しきった陰険な人々の顔などが思い出され
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