りに、身を※[#「足へん+宛」、第3水準1-92-36]いた。※[#「足へん+宛」、第3水準1-92-36]く度に、身体が益々闇の中に沈み込んでいった。
 ……そこで彼は夢からさめた。乞食の餅肌の感触がなお身体中に残ってる気がして、不気味で仕様がなかった。いきなり飛び起きて、窓を開いた。
 外には、仄白い明るみがあった。東の空に薄紅い雲が漂っていた。空の星が変にぎらぎら輝いていた。木立や大気が、総毛立ったようにざわめいていた。夜明けに近いのだった。
 彼は窓にもたれたまま、それらの景色をじっと眺めた。云い知れぬ感情が身内に戦いてきた。それをなお押えながら、じっとしていた。未明の空と地とを前にして、夢の中の猫と乞食の群とが、何かの象徴のように考えられた。
 彼は東の空が白んでくるまで、そのまま身を動かさなかった。そして、如何なる困難を忍んでも学業を続けようと決心した。決心がつくと、初めて我に返ったかのように飛び上った。窓や戸を一杯開け放った。室の中を歩き廻った。それから机に向って、漢口《はんこう》の水谷へ手紙を書いた。その店へ行くことを断り、なお哲学の研究を続ける決心を告げた。その後で彼
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