い、」と誰かの声がした。で、両手に大きな石を拾って、それでやたらに殴りつけた。幾つも敷居のようなものを跨いで進んだ。それを一つ越す毎に乞食の群に出逢った。両手の石を振り廻して追っ払った。
 書後に[#「書後に」はママ]、石段があった。それを下りると、鉄のような重々しい扉にぶつかった。扉が少し開いていて、向うに仄かな明るみが見えていた。その扉を出ればもう大丈夫らしかった。
 ふと気がつくと、二人の乞食が後からついて来ていた。一人は、顔から肩へかけて一面に怪我をしていた。一人は力の強そうな大きな男だった。その大きな男が云った、「仲間の者に傷をつけた以上は、このまま通しはしないぞ」
 その男が乞食の親方らしかった。あたりを見廻すと、闇の中に多くの乞食が潜んでるらしかった。恐ろしくなった。懐から紙入を取出した。何程与えたらいいかと考えてると、闇の中から傴僂《せむし》の乞食が出て来て、両方の膝頭に、掌のような形をした足枷を投げかけた。それが膝頭にぴったり吸いついて、歩けなくなった。「復讐だ、」という声がした。今にも多くの乞食が出て来そうだった。恐ろしかった。扉からさす明るみを横目で見ながら、しき
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