恐れられた。また一方から云えば、彼女の旅行は、彼女から全然離れた所に自分の心を置いてみるのに、またとない機会であった。改めて何等かの口実で断ろうかとも、彼は考えた。然し決断をしかねてるうちに、その日となってしまった。
おかしな日だった。周平は朝早く起きて窓を開いてみた。空も地上も薄暗かった。今にも雨が落ちて来そうだった。今日は雨だから出発は延びるのだろう、と彼は思った。そして愚図々々していた。六時半頃雨傘を手にして出かけた。途中で、ふいに朝日の光りがさしてきた。空はいつしか綺麗に晴れ渡って、木立の陰に霧がすっと靉いていた。曇りだと見えたのは霧のせいだった。彼は足を早めた。
横田の家へいくと、もう出発の用意が出来ていた。
「なんだ、傘を持ってきたのか。」と横田は云った。
「ええ、雨かと思ったものですから。」
保子が笑みを含んだ眼で睥むようにして彼を見た。然し彼女は黙っていた。忙しそうだった。
彼は食事前だったから、大急ぎで朝食をした。それから、皆より一足先に出て、電事で上野駅へ見送りにいった。
朝も早いし、一ノ関までの列車でもあったせいか、乗客はわりに込んでいなかった。見送り人
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