る親戚の別荘があるのだった。
 不在中は女中一人きりだった。それが不用心だというので、周平は留守居を頼まれた。
「ね、いいでしょう。」と保子は云った。「下宿の狭い室でごろごろしてるよりは、家に来て勝手に寝転んでいらっしゃいよ。それにまた、下宿に居るとすれば、高い室代や食料を払わなければならないでしょう。わざわざ苦しんでそんな不経済なことをしなくてもいいわ。ねえ、そうきめとくわよ」
「だって……。」と周平は呟いた。
「何がだってなの。……男って決断力の鈍いものね。私はもうそれにきめてるのよ。井上君にも種々都合があるだろうからって横田が云うものだから、一寸相談することにしたの。けれど、もうきまってることなのよ。」
 周平は苦笑しながら、兎も角も承諾した。実際の所、暑い中をすることもなくて下宿に転がってるよりは、広い家に留守居をしてる方がずっとよかった。その上、九月後の授業料のことも多少気にかかっていた。八月一杯下宿料が助かるとすれば非常に便宜だった。
 然しいざとなると、彼はさすがに躊躇した。たとい不在中にもせよ保子の家で日を過すことは、自分の苦しい心の上に、更に悪い影響を与えはすまいかと
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