女中がやって来て、いきなり隣室の扉を押し開いた。
「井上さんがいらしたわよ。」
彼は開かれた扉からつと身を入れた。真白な明るい室だった。こちらを振り向いた皆の顔が、一時に彼の眼の中へ飛び込んできた。彼は横を向いて帽子をかけながら云った。
「遅くなって失敬。」
「やあ来た来た。」と橋本が大きな声を立てた。「も少しで迎えにやるつもりだったぜ。所がお清ちゃんが、屹度君は来ると云い張るんだろう。だから、迎えにやらないでも来るか来ないかという賭《かけ》をしたんだが、つまらないことで損をしちゃった。然し負けてよかった。……まああたれよ。」
周平は空《あ》けて貰った煖爐の側の席について、ぼんやりあたりを見廻した。金口の煙草をくわえて澄してる竹内の顔が見えた。周平は眼を外らしながら突然云った。
「横田さんからことづかって来たんだが、今晩急な用事で来られないから、皆に宜しく云ってくれとのことだった。」
「君逢ったのか。」と村田が尋ねてきた。
「ああ、昨日《きのう》一寸。」
村田は変な瞬きをした。周平にはそれが一寸痛快な気がした。心が落付いてきた。
「これだけの人数で十分よ。……井上さん、いらっしゃ
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