彼はいつしか眠った。午《ひる》の食事を女中が運んできたのを、夢心地で怒鳴りつけるように郤けて、又白けた眠りに陥った。
 三時頃、村田が訪ねて来たため、彼はその眠りから本当に覚された。頭が妙にぼんやりしていた。村田を通さしておいて、床の中から起き上らなかった。
「このままで失敬するよ。」と彼は云った。
「ああ。だがどうしたんだい。」
「少し寒気《さむけ》がして、やたらに眠いんだ。」
 馬鹿々々しいことを云ってるような気がして、彼はじっと天井を仰いだ。
 村田はその枕頭《まくらもと》に坐って、女中が持って来た火鉢の火を弄《いじ》っていたが、突然云い出した。
「君怒ってやすまいね。……昨晩は僕が悪かったよ。然し君の云い方もいけなかったんだ。噂が嘘だということは分っていたが、君の調子が調子だったものだから……。」
 周平は変な気がして村田の顔を眺めた。彼にとっては、それがずっと以前のことのようだった。昨晩村田と別れてから、長い時日がたってるように思われた。実際そんなことはもう脱却してしまっていた。
「何とも思ってやしないよ。」と彼は云った。
「そんならいいが……。然しこれからどうするつもりだい
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