恩義をつくづく感じています。噂を立てた本人は分っています。私は自分の信ずる手段を取ります。このままでは済ませない気がします。
 私は新らしい途を踏み出すつもりです。自信を持っています。
 何もかも許して下さい。御恩義には屹度報いる時があることを期しています。今はただ感謝きりありません。
 細かく書くつもりですが、何にも書けません。私の今後のことは、友人の村田や其他から御耳に伝わることと存じます。暫くお別れすることが……今はもうつらくは思われません。
 許して下さい。これより外に途がないのです。私は信じています。
[#ここで字下げ終わり]

 周平は書き続けられなくなって、それで止した。読み返しもしないで封をしてしまうと、堪え難い気持になった。
 最後に只一度、保子へ逢いたかった。然しその場面を想像すると、自分自身が恐ろしくなった。どんなことになるか分らない気がした。
 彼は凡てを踏み蹂るような心地で、女中を呼んで手紙を出さした。急に寒気《さむけ》がしてきた。惨めな室の中を見廻してから、床を敷いて寝た。身動きも出来ないほどの疲労を全身に覚えた。
 暫く眼を開いたり閉じたりしているうちに、
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