た空間が、前方に見えてきた。
 彼はすぐにペンを執って、保子へ手紙を書きかけた。
 然し、一句毎につかえていった。細かく自分の気持を書くつもりだったが、その気持にまとまりがつかなかった。心の底では、保子へ書いてるのかお清へ書いてるのか、けじめがつかなかった。
 彼は書きかけの紙を幾度も裂き捨てた。然し書かずには居られなかった。何かに駆り立てられる心地がした。昏迷の気持をじっと押えつけ、前に浮びくる幻の面影へ向って、がむしゃらに簡単な文句を投げつけた。

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 先達て、年末から正月へかけてお手伝いすることを約束しましたが、それが出来なくなりました。毎週月曜にもお伺い出来なくなりました。もうお家へ伺うことが出来ないのです。
 堪らない噂が広まっています。あなたと、お清という或るカフェーの女中とに、私が肉体的関係を同時に結んでるというのです。噂は全く噂です。けれど……。
 許して下さい。私はどうしていいか分らないのです。許して下さい。私はあなたに恋していました。お清にも恋していたかも知れません。
 今はもう何でもありません。自分自身が呪わしいだけです。
 あなたと先生との
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