った。小さな口を心もち開いて、口からとも鼻からともなく、軽い細い息をしていた。
「おい、お清ちゃん。」と周平は呼んでみた。
囁くような低い声だったが、お清はそれと同時に、静かに眼を見開いた。……周平は息をつめた。彼女の眼覚めが余りに速かで静かだったばかりでなく、その眼が、眠ったままのその眼が、余りに大きくて安らかで美しかった。彼女はぼんやり彼の顔へ瞳《ひとみ》を据えながら、口を開いて何やら言いかけた。瞬間に、彼は我を忘れて身を乗り出した。その眼へ、次にその口へ、唇を押しあてた。そして突然、自ら自分を※[#「てへん+宛」、第3水準1−84−80]《も》ぎ取るようにして立ち上った。
「僕はもう帰るよ。」
お清は静かに上半身を起して、後手に髪を撫で上げた。
「帰っていいだろう。」と周平は足先でぐるりと廻りながら云った。
「ええ。だけど……。」彼女は長く間を置いて、それから俄に彼の方を仰ぎ見て云い添えた。「あなたはもう私と逢わないつもりでしょう。別れ際にお茶でも飲んでいらっしゃいよ。」
終りを冗談《じょうだん》の調子で云ってのけて、彼女は起き上った。周平はまた炬燵に坐った。火鉢にかかって
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