に佇んでいた。
「今時分、もう仕様がないじゃないの。」
 周平はやはりじっと立っていた。
「焦れったい人ね。おはいりなさいったら!」
 三度目にそう強い調子で促されて、周平は初めて中にはいった。お清は二人の下駄を、奥に通じてるらしい障子のわきの板の間に置き、開扉の締りをして、それから二階へ上っていった。周平もぎしぎし軋る梯子段を後に続いた。
 梯子段を上りきって、其処の骨太な障子を開くと、粗末な六疊の室に出た。
「おお寒。……一寸待っていらっしゃい。今火燵をいれてあげるから。」
 お清は室の隅に肩掛とコートとを脱ぎ捨てた。周平はぼんやり腰を下した。

     四十一

 それは、妙な感じがする室だった。黝ずんだ天井、薄汚れのした黄色っぽい壁、汚点《しみ》のある肯い窓の障子、それと対照して、新らしく張り換えたらしい真白な縁側の障子、浅い床《とこ》の間《ま》の横の一枚の襖と反対の側の二枚の襖とは、処々に切り張りがしてあった。室の中の有様もまた、周平の眼には物珍らしかった。安価な青い瀬戸の円火鉢には、錻力《ぶりき》の大きな薬鑵が疊の上にじかに置いてあった。その横の火燵には、派手な銘仙の布団
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