、僕は今晩初めて知った。竹内の中傷に違いないんだ。」
「まあ、奥さんと私とに?」
「そうさ。余りに人を侮辱した噂だ。」
お清は暫く何やら考え込んでいたが、やがて低く呟いた。
「何だか変な話ね。」
「何が?」
「その奥さんとあなたとの間が怪しいということは、聞いていたけれど……。」
「竹内からだろう。」
「ええ。……でも、あなたは本当にその奥さんと何でもないの?」
「何でもないさ。奥さんの方には親切きりだし、僕の方にはただ感謝きりなんだ。その噂を聞いては、僕はもう奥さんに顔が合せられない。その上、君と奥さんとを同時に……考えても堪らないことだ。」
「だけど、」とお清は落着いた声で云った、「その噂は嘘だとしても、世の中にはそんな場合だってあるわ。」
「どんな場合が?」
「一人の女を想ってながら他の女と関係するような……。」
周平はぎくりとしたが、それが我ながら腹立たしかった。きっぱり云ってのけた。
「そんな場合のことを云ってるんじゃない。僕は自分のことを云ってるんだ。」
「じゃあ、噂は噂としておけばいいじゃないの。」
「噂にもよるよ。」
「私だったら噂だけなら、どんなことを云われようと
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