やってくると、無遠慮にその手を取って引寄せながら云った。
「まあここに坐れよ」そしてちらと周平の方を顧みた。「井上君がいやに黙ってるから、君がその代りをするさ。」
「黙ってる人があって丁度いいわ。先刻からあなた一人で皆の分を饒舌《しゃべ》ってるじゃないの。」
彼女はぐるりと卓子を廻って、煖爐の火を見る風をしながら周平の側に一寸|屈《かが》んで、それから向うへ行った。
然し周平は彼女の方へ眼をやりもしなかった。不快の念が次第に胸へたまってきていた。気持の上のこだわりを自分でどうすることも出来なかった。我慢すればするほど益々悪い結果になりそうだった。
彼は立ち上って、思い切って伸びをしてみた。
「すっかり暖くなっちゃった。」と彼は云った。「今晩少し用があるから、僕はこれで失敬するよ。」
「もう行くのか。」と竹内が、軽蔑的に口を尖らして彼の顔を見上げた。「君とはだいぶ暫くぶりだったね。……おい、水曜日にも横田さんの所へ少し来いよ。勿論君は、始終あの家へは行ってるだろうが。」
それを黙って見返した自分の眼付が、殆んど敵意に近い色を帯びてるのを、周平は自ら感じた。そして軽く頭を下げながら
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