気な場所が好ましかった。博物館にはいると、門内の庭園を長い間ぶらついた。動物園では、水にもぐってる河馬が時々水面にのっそり顔を出すのを、何度も待ち受けて佇んだり、昼寝をしてる獅子が身を動かすのを、ベンチに腰掛けて長い間待っていたりした。が殊に、植物園が一番静かでよかった。
 西に傾いた弱々しい日脚の、僅かな暖かみを肩先に惜んで、ゆっくり坂を上ってゆくと、左手に、粛條たる平地が一面に日の光りを受けていた。立ち並んでる桜の古木の、黄ばんだ葉をまばらに散り残してる枝の下に、霜枯れの草原が遠くまで透し見られた。それと照応して、空がしめやかに澄みきっていた。
 隆吉は口笛を吹きながら歩いていたが、突然足をゆるめて云った。
「家《うち》にもこんな庭があるといいなあ。」
「じゃあ叔父さんにねだって拵えて貰うさ。」
「駄目だい。」
「なぜ?」
「なぜって、駄目だい。」
 木の下に歩み寄ると、紫がかった木の葉の影が、点々と淡く落ちていた。
「隆ちゃんは、家《うち》にこんな広い庭があったらどうする。」
 隆吉は一寸眼を見据えた。
「僕ね、石榴《ざくろ》の木を一杯植えるよ。」
 周平が黙ってるのを構わずに、
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