ろうと思った。それが自分を救う唯一の途のように考えられた。そして彼は彼女の言葉を待った。
然し彼女は、彼が予期した方へは来なかった。暫く黙った後に、俄に苛立った様子になった。自らごまかすかのように忙しく針の手を運びながら、落着きのない角立った声で云った。
「旅をしないんなら、歳暮《くれ》からお正月へかけて少し手伝って頂戴。いろんな用があるのに、横田があの通り懶惰《ものぐさ》だから、私一人で困ってるのよ。」
「ええ、何でもします。」と彼は答えた。
「そう無雑作《むぞうさ》に受合って大丈夫ですか。また急な仕事が出来たなんかって……。」
「いえ、大丈夫です。いつです、どんな用事でも、私で間に合うことなら飛んで来ます。」
「屹度でしょうね?」
と念を押して、彼女は一寸眼を空間に定めて考え込んだが、それから、また静かな顔付で彼の方を見やった。彼は妙に不安になった。彼女が意識して避けてる事柄がその底にあるのを、彼は漠然と感じた。いつまでも黙って向い合ってるのが苦しかった。
そしては、隆吉を探しに立っていった。
周平がやってゆくと、隆吉は左の頬に転い笑靨を寄せながら、目玉をぐるりと動かして、
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