に気が挫けてきた。彼女のうちの善良なものに何かを訴えたくなった。
「訳があるというんじゃないが、僕はその子供を教えてやってるし、子供の父親のことも可なり聞いてるし、子供を引取ってる奥さんにも随分世話に……。」
 云いかけて彼は、きっと唇を噛んだ。
「その奥さんでしょう、あなたを大変可愛がってるというのは。」
 彼は駭然として彼女を見つめた。
「そんなに喫驚しなくってもいいわ。別に変な意味で云ったんじゃないから。」
「じゃあ特別にそんなことを断らなくてもいいさ。」
「だけどあなたが変な風にとったようだから……。」
「馬鹿なことを云っちゃいけない。僕はその奥さんに非常に世話になってるんだ。心から本当に感謝してるんだ。」
 彼はぷっつり言葉を切って黙り込んだ。云えば云うほど、心と言葉とがちぐはぐになりそうだった。そしてその結果が恐ろしくなった。お清の美しい二重眼瞼の眼がすぐ前に見開かれていた。
「いやに考え込んじゃったのね。」と暫くしてお清は云った。「もうそんな話は止しましょうよ。……何か面白いことはなくて?」
 客は余り込んでいないらしく、家の中がひっそりしていた。周平はいつのまにか保子の
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