チをすった。真白な淋しい顔がぽっと輝し出されてすぐにもやもやとなった。その瞬間に、彼女は肩の手を滑らして、彼の手の指を小指と藥指と二本探って、そっと握ってきた。
「ねえ、訳を仰しゃいよ。」
取られた二本の指から、しみじみとした而も妙に腹立たしい感情が、胸の奥までしみ通っていった。彼は我知らず話し出した。
「僕は今或る家の家庭教師みたいなことを少ししてるんだが、その子供が実は孤児《みなしご》なんだ。お祖母《ばあ》さんが一人あるけれど、それとも別々になって、叔父さん夫婦の家に引取られてるのさ。叔父といっても本当のでなくて、父親の従兄《いとこ》なんだが……。」
そこまできてつかえたのを、彼はがむしゃらに云い進んだ。
「その従兄弟同士で、以前、或る一人の女に恋したのさ。いろんなことがあって、女は一方を選んでしまった。選にもれた方の人は、半ば自暴自棄になっていったが、そのうちに或る女と同棲するようになって、子供が一人出来た。すると間もなく、その女から逃げ出されて、しまいに病死だか自殺だか分らない死に方をしたんだ。後には子供とお祖母さんとが残った。そして、お祖母さんの方は他家《よそ》に雇われて
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