んとに可笑しかったわ。でもあれは、私の知恵じゃないのよ。お主婦《かみ》さんと二人で一生懸命に考えたのよ。」
「然し随分長い間の執念だね。」
「え?」
「竹内がさ。」
「何だか分ったものじゃないわ。あの人にはいやな野心ばかりしかないんだから、うっかり出来やしない。私ちゃんと尻尾を掴んでいることがあるのよ。」
 そんなことを話してるうちに、周平は次第に心が或る深みへ引きずり込まれる気がした。お清の言葉を本当だとすれば、そういう風に自分との関係を竹内に伝えられた以上は、今後このままでは済みそうに思えなかった。一時の意地張りからとは云えないものが感ぜられてきた。そして彼は、一種の甘い心の動きと矜りとを禁じ得なかった。それが一転して気遣わしい不安となった。彼は竹内のことを考え、次に保子のことを考えた。然しお清から来る魅惑の方が更に強かった。それに抵抗しようとしても、ともすると足が滑りそうだった。縋るべきものはただ一つの問題のみだった。彼は愈々時機が来たのを感じた。
 電車通りへ出た時、お清は一寸足を止めた。彼はそれに構わず、黙って通りを向うへ横切った。それからすぐに不忍池《しのばずのいけ》の端に
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