六歩した後に云い続けた。
「そして云うことが振ってるわ。井上君は君とそんなことをしては他に済まない人が居る筈だと、こうなんでしょう。……でも、あなたそんな人があって?」
周平はぎくりとした。竹内が最近横田の書斎へ時々顔を出してる由を、俄に思い出した。然し、済まないというのがどういう意味であるか推しかねて、黙っているうちに、お清は先を続けた。
「あってもなくっても、そんなこと別に構やしないわね。だけど、あんまりな云い草だから、あなたはいやに人を見下してるのねと、つっかかっていってやったの。私少し酔ってたのよ、屹度。そして訳の分らないことを云い争ってるうちに、何だかこんぐらかってしまって、それから、竹内さんの捨台辞にね、要するに僕も君に惚れてるのさ、ですって。私鼻の先でふんと澄してやったわ。……あんな厭な人ってありゃあしない。」
「そんなに悪く云うもんじゃないよ。」と周平は漸く云った。
「構やしないわ。すぐにおかしな関係があるように取るのが、あの人のいつもの癖なんだから。先《せん》にも同じようなことがあったのよ。」
「石のつぶての一件の時かい?」
「あら、あなたも知ってるの……あの時はほ
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