るだろうという気がした。電車が来て、可なりの人が停車場から吐き出されるのを、じっと物色してみたが、お清の姿を見出さないと、淡い不安に囚えられていった。そしてはまた橋の中程まで行って、その欄干にもたれて佇んだ。
 停車場から出て来た人の足音が途絶えて、あたりがひっそりとなった時、お清はひょっくり霧の中から現われてきた。
「御免なさい、遅くなって。」
 黙って彼の側へ寄ってきて、欄干に一寸手を置いたが、ふいに大きな声を立てた。
「おう冷たい。濡れてるじゃないの。」
 鉄の欄干が霧にしっとりと濡れてるのを、周平は初めて気づいた。驚いて手を引込めながら、彼女の顔をじっと眺めた。彼女は薄暗い中で大きな瞬きを一つして云った。
「でもよく来て下すったわね。私すっぽかされるのじゃないかと思って、蓬莱亭へ一寸寄って来たから、遅くなったのよ。」
「だって約束じゃないか。」
「約束は約束だけれど……。」
 云いさして彼女が、笑みを含んだ眺め方をしたので、周平は漸く心が落着いた。ただ彼女が、水浅縹色《みずあさぎいろ》の長い毛糸の肩掛をしてるのが、一寸変に思えた。
 周平は黙って歩き出した。橋から右へ河岸《かし
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