、二重眼瞼の眼を一杯見張ってくるりとさした。
「今晩何処かで逢わない?」
云ってしまうと、案外心が落着いてきた。じっと見つめられたのを、彼も見返してやった。彼女はその眼を外らして、向うの室へちらと目配せをした。
「だからさ。」と周平は低く囁いた。
お清は眼と口とで微笑んだ。
「どうだい。」
「今晩は駄目。」彼女も大きい声で云った。
「じゃあ明日《あした》。」
「明日ならいいわ。お午《ひる》から?」
「昼間はいやだ。晩にしよう。」
「ええ。八時頃。」
「本当かい。」
「本当よ。」
言葉が途切れると、不思議な気持になった。二人共ぼんやり顔を見合った。嘘とも真《まこと》ともつかない約束が、ぽかりと投げ出されていた。周平は手を銚子にやったが、酒はもうなくなっていた。も一本とお清が云うのを断って、そのまま帰りかけた。
「どうするの?」とお清は低く云った。
周平はその眼を覗き込んだ。敵意を以て挑みかかるような鋭い眼付だった。
「本当さ。」と彼は云い捨てた。そして咄嗟につけ加えた。「八時頃、お茶ノ水の橋で待ち合せよう。」
「屹度ね。」と彼女は声高く叫んだ。
「ああ。」
「じゃあお約束」
彼
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