」
彼は何とも答えないで空嘯いてみたが、ふと、先刻自分がしたように、竹内が向うからこちらの様子に耳を澄してるに違いないと思うと、それが気になって落着けなかった。
「竹内ならこちらへ呼んできたらいいじゃないか。……僕が来てることは知ってるんだろう。」
「ええ。だけど一人がいいんですって。」
「変な奴だな。」
お清は口を尖らしてみせた。
「何だい?」
「ほんとに変よ。あなたが来てると竹内さんはいつも帰ってゆくから、今日はだまかして三階に通してやったのよ。すると、おかしかったわ。酔っ払ってる癖に急に真面目な顔をして、内密内密《ないしょないしょ》だって……。」
「よし、そんなら僕の方から押しかけていってやる。」
周平が立ち上ろうとするのを、お清は無理に引止めた。
「そんなに気にかけなくってもいいじゃないの。」
云われてみると、周平はぎくりとした。何かと空威張《からいば》りをしてみても、やはり声をひそめてこそこそしていたことが、俄に頭に映ってきた。そして自分自身に腹が立ってきた。そのままでは済せない気になった。半ば捨鉢に声を高くして云った。
「おい、お清ちゃん。」
お清は喫驚したように
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