街路をさまよい歩きながら、しまいには、お清から遠ざかろうと思ったり、お清にぶつかってみようと思ったりした。
 然しそれは二つながら実行出来ない決心だった。
 彼は今迄に何度か、お清から遠ざかろうと決心したのだった。けれどそれが出来なかった。お清と英子とは同一人であるかも知れないという疑いは、彼のうちに根を下して、一種の幻覚に似た形を取っていた。絶えずそれが頭につきまとった。隆吉を相手にしてる時、保子の前に淋しい心を投げ出してる時、彼はふとお清のことを思い出して、慌てて立上ることが多かった。保子からそれとなく様子を窺われてることを知り、今にも大きな打撃がやってくることを予期しながらも、やはりお清の方へ惹かされていった。
 それでも彼は、お清と顔を合せると、じかにぶつかってゆくことが出来なかった。彼女が果して英子と同一人であるかないか、ぶつかった後に明かとなった場合には、その何れの結果も恐ろしい気がした。英子だったら……。英子でなかったら……。どちらを考えても、後に残される痛ましい自分自身の姿が見えてきた。お清に心惹かされてるのは、もはや単なる好奇心からばかりではないことを、彼ははっきり意
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