いのかな。一周上《ひとまわりうえ》というのさ。」
「それじゃ三十というの。」と彼女は微笑の口を尖らしてみせた。「どうせそうなんでしょうよ。お婆さんは引込んでろって謎でしょうよ。」
そして扉をがたりと閉めて出て行った。
それでも、彼女は間もなくやって来た。そしてはまたすぐに出て行った。ちっとも落着いていなかった。他に気兼ねすることでもあるのかと思えるほどだった。それが周平の気分を苛ら苛らさせた。彼女が居ない淋しさに浸ることも出来なければ、彼女が居るぱっとした明るさに和することも出来なかった。蔭と日向とが交代にやってくるようなちぐはぐな気持のうちに、酒がいやに頭へばかり上ってきた。そして足先からぞくぞく冷《ひ》えてきた。
村田は饒舌り疲れたのか、長椅子の上に身を反らせて、天井の電燈をまじまじと眺めていた。
「もう帰ろうか。」と周平は云った。
「うむ。」
村田はすぐに応じたが、やはり身を動かさなかった。暫くして云った。
「何だか今晩は変につまらない晩だね。」
それが、こんな処へ誘われてきた不満の声のように周平には聞えたが、何とも返辞をしたくなかった。
呼鈴の音でやって来たのは最初
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