でしょう。」
引き取って云った声の方を顧みると、お清の真白い顔が入口から覗いていた。
「なあんだ君か。」と村田が云った。「喫驚しちゃったよ。持って来たら早く出せよ。」
「取りにいらっしゃい。秘密のお話だから中にはいってはいけないんでしょう。」
「そうだそうだ。葷酒《くんしゅ》以外の者は何人もこの山門《さんもん》に入る可らず。取りに行ってやる。」
村田が立って行くと、お清は四、五歩|退《しざ》って、戸の外に出て来た村田の横をつとすりぬけ、室の中にはいり込んで、がたりと扉を閉めた。
「おい、冗談じゃない。開けろよ、早く。」
「開けないわよ。私井上さんと秘密の話があるんだから、誰もはいってはいけない。……ねえ、井上さん!」
酒を飲んだらしい赤味のさしてる真白い顔の中から、白目がちの澄んだ眼が、周平の方をじろりと見て笑っていた。周平は口が利《き》けなかった。
やがて村田がはいってきて、長椅子の上の周平の側に身を落すと、お清はいきなり二人の間にはいり込んで、二人の手をしかと左右の手で握った。その手が妙にばさばさ乾ききってるように、周平は感じた。
「秘密の相談て、何なの?」
瞬きと一緒に
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