打明けてもいい――村田と二人きりで、ゆっくりお清に逢ってみたいからだった。然し今その途中に在ると、お清にゆっくり逢いたいというのは、単なる好奇心からばかりではないような気がした。お清の身の上に種々な想像をめぐらしながら、いつのまにか頭の中に浮べてる彼女の姿に対して、彼は淡い胸の震えを覚えた。それは、保子に対する気持と、同じ種類でありながら異った調子のものだった。恋でも愛でもないけれど、それに似た怪しい魅惑で、一方が澄みきってるのに対して、これは底の方に熱っぽい濁りを持っていた。
彼は暗い所へでも陥ってゆくような気がした。と同時に、そうした自分自身を甘やかすような気分も動いてきた。陥るなら陥るがよい、その後で跳出してやれ、と後は淋しい心の中で自ら云った。
蓬莱亭の前に立って、内部に白い布《きれ》を垂れてる硝子戸の隙間から、そっと中の様子を窺うと、五、六人の客が声高に談笑していたが、親しい仲間の者は来ていないらしかった。
村田は周平の方へ一寸|目配《めくば》せをして、つと扉を押した。周平は黙って彼の後に随った。
奥の帳場格子の向うに、どんなことがあっても没表情な顔をくずさない主婦《
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