しないよ。今に僕は、皆をあっと云わせるほど素晴らしいものを書いてみせるつもりだ。」
 周平は唖然とした。
「その女に逢ったというのだけは嘘だが、」と村田はやがて思い出したように云った、「吉川さんの話は本当だぜ。嘘だと思うなら横田さんにでも聞いてみ給え。」
「いや、そんなことはどうでもいいんだ。」
 そして周平はすたすた歩き出した。
「おいおい、そう急ぐなよ。」と村田は後から呼びかけた。「僕の方ばかり尋ねておいて、御自分の方はどうしたんだい。その……英子という女が何とかしたのか。」
「何でもないがね……。」
 周平はお清のことをうっかり打明けようとした。がその時、向うから貨物自動車がやってきて、側を走り過ぐる騒然たる響きのため、一寸口を噤んだ間に、彼はふと思い直した。
「実は、隆《りゅう》ちゃんはお父さん似かお母さん似か、どちらだろうと思って、君に尋ねてみたのさ。」
「なあんだつまらない。いやに匂わせるものだから、何か面白いことかと思ったら……。そりゃあ君、二人の間に出来た子だから、両方に似てるにきまってるさ」
 空気が澄みきってるわりに、妙に真黒い感じのする寒い夜だった。暫く黙って歩い
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