ていた。
 周平はそれを耳にした瞬間から、何だか聞いたような名前だと感じた。そしてすぐに、隆吉の母は高井英子とかいう女だと村田の話に聞いたことを、はっきり思い出した。
 隆吉の母が英子という名であることは、吉川の日記にあったE子というのに照し合しても、本当らしかった。然しその姓の方は、村田の話に聞いただけで、誰に確かめたわけでもなかった。としても、名が間違っていなければ、姓はなお更間違っていないとするのが至当だった。
 偶然の符合であるかも知れないが、然し……と周平は考えた。そして考えれば考えるほど、怪しい疑問のうちに陥っていった。高井という姓はそう沢山はないこと、英子の身の上について村田から聞いたこと、お清が時々京阪の弁を使うこと、それから、お清が保子そっくりの眼付をすること――それは何も英子とお清とを近づける理由にはならなかったが、然し、それが周平の心には最も強く響いた。彼は当時の吉川の心持に思いを馳せてみた。すると、その眼付が非常に重大な意味を持ってきた。
 それにしても、お清が果して英子の後身だとするならば、英子に逢ったことがあると自ら云ってる村田が、ああ平然たる態度でいるわけ
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