していたんだ。そして愈々最後のカタストロフって幕さ……と云っても、それは勿論喜劇だがね。」
 周平は黙って聞いていた。
「或る晩、竹内はさんざん酔っ払って、或は酔ったふりをしてたのかも知れないが、あの女を捉えて、手帳と万年筆とを――そんなものをいつも持って歩いてる奴なんだ――それをつきつけて、これに何か書けと膝詰談判を始めたものだ。無理に返事を引ったくろうって寸法さ。すると、お清の奴、さんざん焦《じ》らした揚句に、一時間も奥に引込んで、自分一人でかそれとも誰かの智恵をかりてか、そこの所は分らないがね、一世一代の名句をひねり出したのさ。句に曰く、
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君ゆえに石のつぶてを心して、なしのつぶてとまいらせ候
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そして署名を、賽《さい》の河原《かわら》より、とね。」
 どうだい、というような眼付で村田は周平の顔を窺った。
「字はまずいそうだが、句はたしかになってるだろう。それで竹内の奴、一度にぎゃふんさ。所が面白くしたもんだね。先生その句を大事にしまっておいて、酒に酔っ払うといつも、お清は君カフェーの紫式部だぜ、実は内密だが……といった調子で、それを
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