淋しい心を持っていった。隆吉はその懐へ飛び込んできて、父母のことで彼の急所をつっ突いた。彼の心は更に乱れた。それが保子へ反映して、彼女の苛立ちとなるのだった。
彼はどうしていいか分らない自分自身を見出した。そしては次第に、酒杯のうちに身を浸していった。
三十
諸方のカフェーへ出入するようになってから、周平の身の廻りは益々淋しくなっていった。薄っぺらな蒲団、二三枚の着物、セルの袴、七八冊のノート、粗末な古机、前年から持ち越しのソフト帽、などが彼の所有の全部だった。柳行李まで売り払った。大学の制服も質屋の蔵に納まったきりだった。そして、当座の必要品だけのがらんとした室に自分を見出して、彼は半ば自暴自棄な悲壮な感じに打たれた。
そういう中にあって、彼は内心の二つの矜《ほこ》りをあくまでも把持していった。――一つは、保子の好意を濫用しないことだった。彼は如何に困っても、彼女から決して金を借りなかった。月々渡されるだけを黙って受取るきりで、それ以上の物質的補助を仰ぐことは、自分の心をも彼女の心をも涜すことのように思われた。それがどんなに苦しくとも、やはり、やはり、彼女を心のう
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