実の進みを多少なりと正しい方向へ導くためには、もはや、思いきってぶつかってゆくの外はなかった、先へつきぬけるの外はなかった。焦慮しながら事実の後へくっついていくのは愚の至りだった。
 彼は大胆に凡てを取り容《い》れようとした。元通り、毎週一回隆吉の質問に応じに来た。横田や保子に対して、あらゆる気兼ねを打捨てながら、平然と――図々しいほど――振舞った。そして遂には自分の心が、強い力のうちに支持されてるのか、或は捨鉢に投げ出されてるのか、彼は自ら分らなくなった。
 それを、保子は勝手に引廻した。
 隆吉の方の用が済むと、彼女は彼に遊んでいらっしゃいと云った。彼は彼女の側に腰を落着けた。取留めもない世間話をした。夕方になると、御飯を食べていらっしゃいと彼女は云った。御馳走がありますかと彼は尋ねた。その御馳走が出来る間、彼は庭をぶらついたり、寝転んで雑誌を読んだり、隆吉を相手にしたりした。横田と将棋をさすこともあった。食後横田が書斎に退いても、彼は立ち上らないことが多かった。隆吉や時には女中をも交えて、トランプをしたり、五目並べをやった。仕事を済した横田がそれに加わると、帰るのがなお後れた。漸
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