顔が赤くなりながら少しも酔を覚えなかった。頭の中が冴え返ってくるばかりだった。そして、室の中の光景が、硝子をでも通して眺めるように、淋しくひっそりと感ぜられて仕方がなかった。その冴えた淋しさが更に自分の方へ反射してきた。
彼はいい加減に食事を済して縁側に出た。星も見えない魔物のような夜だった。眼をつぶって暫くじっとしてると――隆吉がやって来た。彼はいきなりそれを捉えて、膝の上に抱いてやった。静かな涙が出て来た。
二十六
頭の中で考えめぐらしたことが、実際に当っては如何に無力なものであるかを、周平は知った。進むか退くかの問題に於て、自分の態度を定める問題に於て、その時々に考え決意したことは、実は、その時々の気分に過ぎなかった。気分が異るに随って、考えもすぐに変っていった。その間に、事実はぐいぐい進んでゆく、凡てを引きずって進んでゆく。そして何処まで進もうとするのか?
周平は、考えると恐ろしくなった。横田と保子と隆吉とを前にして、自分の地位を顧みると、このままでは済みそうになかった。而も自分の意志が無力だとすれば、どうすればいいのか。眼に見えてる破滅を避けるためには、事
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