でいた。周平は漠然と或る不安を感じだした。
「生活はどうにでもなるんでしょう。僕はあるだけのものでやっていく覚悟をしています。」と周平は云った。「ですが、今の、話というのは一体どんなことですか。」
「どうって、まだはっきりしたことではないが……漢口《はんこう》の水谷さんから手紙が来たんです。」
そして彼は、机の抽斗から一通の信書を取出した。
周平は差出された手紙を披《ひら》いて読んだ。――初めには時候の挨拶から、毎度井上が世話になる礼が述べられていた。「扨て甚だ唐突の儀に候えど」として本文にはいっていた。支那人の排日熱のため商況が俄に不振となり、加うるに暴動があったため、水谷の店も多大の打撃を蒙って、今後の送金は意に任せないかも知れない、としてあった。やがて恢復の途もあろうけれど、目下の所は全く見当がつかないので、こちらからの送金は出来得る限り心掛けておくつもりではあるが、不時のものとして予算に入れずに、他から学費を得る方法を講ずるよう、井上へもよく申し聞かせ、なお御尽力を願いたい、と認めてあった。「場合によっては貴下の事情も本人へ御話相成、心して進むよう何分の御指導を煩わし度、」
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