というようなことがあって、実は井上へ直接申してやるべきだが、「御承知の如き小心者故」悲観するといけないから、折を見てとくと話して頂きたい、と結んであった。
 周平は――我ながらそれを変な気がしたが――大した打撃をも感じなかった。いつかはぶつかるべきものにぶつかったという気持だった。彼は注意して二度くり返し手紙を読んだ。そして野村の顔をじっと眺めた。野村も黙って彼の顔を見返した。
「この後に便りがありましたか。」と彼は尋ねた。
「他のことで一度手紙が来たですが、よほど困っていられるらしいです。それでも、一週間ばかり前に、君へやってくれと云って三十円送って来ました。」
 それから野村は暫く黙っていたが、突然こんな事を云い出した。
「手紙の中に、僕の事情も君へ話してきかして指導してくれ、というようなことがあったでしょう。それはね、借金をしてはいけないという意味ですよ。」
 野村の語る所に依れば、彼は大学卒業前に少し無駄使いをして高利の金を借り、それがまだ千円余り残っていて、月々六分の利子の支払いにさえ追われてる始末だそうだった。――どうして水谷がそれを知ってるかといえば、知人の令嬢を妻に世話
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