ぎごちない気持で座に就いた。野村からいろんな話をもちかけられるのに、ともすると的外れの返事をしそうな気がして、口を噤みがちだった。
「あ、そうそう、」と野村は初めて思い出したように云った、「君は横田さんの家へ留守に行っていたが、まだ続いて居るんですか。」
「いえ、二三日前下宿に帰ってきました。」
「どうして? 来月の初めまでとかいうことではなかったですか。」
「所が、奥さんと隆ちゃんとが急に戻って来られたものですから、僕も引上げたんです。」
「引上げるはよかったな。……そして、やはりこれからも教えに行くんでしょう。」
「そうですね……。」と云いかけて周平は言葉を途切らした。何と云っていいものか一寸分らなかった。暫くして続けた。「隆ちゃんは非常に頭がよくて、別に教える必要がないものですから、僕は断ろうかと思っています。勿論あの仕事は横田さんの好意からですけれど、無駄なことをして報酬ばかりを貰ってるのは、余り向うの好意に甘えるような気がして、実は心苦しいんです。」
「そしてどの位貰っています?」
「月に二十円です。」
「それ位のことなら、黙って貰っといていいじゃないですか。」
「ですけれど
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