つらうつらとした夢心地の薄暗い背景から、彼女の澄み切った眼がじっとこちらを覗いていた。周平は云い知れぬ心の戦《おのの》きを感じた。彼女の前にひれ伏したい気持ともはやそれも許されないという意識とが、彼のうちで入り乱れた。彼は彼女との約束を思い出した。彼女の最後の言葉がはっきり耳に響いてきた。
 彼は自ら云った。「もう万事終ったのだ。彼女の寛容に、このうえ甘えることはそれを涜すことなのだ。自分は自分一人の途を進もう。彼女との約束を心に秘めて、それを力として、自分一人の途を進もう。」
 それは何とも云えない悲壮な感激だった。周平は初めて眠りから覚めたような心地で、自分のまわりを見廻した。貧しい淋しい室一つが自分のものだった。
 彼は立ち上って腕を打ち振った。泣きたいような気持が寄せてくるのを強いて郤けた。そして野村を訪れてみた。これからの生活を確めておくつもりだった。
 野村は丁度その晩家に居た。
「やあ珍らしいですね。どうしたんです、暫く来なかったが。何か面白いことでもあったですか。」
 そういう風に彼は周平を迎えてじっと顔を見戍った[#「見戍った」は底本では「見戌った」]。
 周平は妙に
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